変形性股関節症と日々の生活
以前、人工股関節への置換手術を行った方の記事を書いたことがありますが、今回も同じような過程で手術に踏み切った患者さんのお話です。変形性股関節症は、簡単にいうと股関節の軟骨がすり減り、直接骨同士がこすれることで炎症がおき周囲に痛みを感じる症状です。
この患者さんは、私が会社員時代から企業研修でお世話になっている先生で、とにかく忙しく日本中を回られておられます。数年前から時々、当院でお体のメンテナンスをさせて頂いていますが、2、3年前から股関節症の痛みが出るようになっていました。医師からも股関節の状態は良くないといわれながらも、当院の施術を受けつつお仕事をされていたようです。
ここ最近はお見えにならないので心配していましたが、先日ほぼ1年ぶりに来院されました。驚いたことに、両手に杖を持たれての来院です。あまりの変貌ぶりにビックリしながらも、お話を聞くと日常生活にも影響が出ているとのこと。医師からは、「行けるところまで我慢してください。そうしたら手術しましょう」との、耳を疑うような話をされたようです。
QOLの維持
毎日が痛みとの戦いでは、肉体的にも精神的にも、そして社会的、経済的などあらゆる生活の質が下がってしまいます。「QOL」とは、Quality of Lifeの略で、日常生活品質の維持とか、患者さんが自分らしく納得のいく生活の質の維持を目指すという考え方です。
変形性股関節症の患者さんのほとんどが、手術を拒否し「現状保存」を望まれます。関節症の前期~初期であれば当院でも疼痛をコントロールする施術が可能ですが、骨同士がすり減る末期状況では施術は行わず専門医での置換手術を勧めています。
当然ですが、「自分の体の一部を人工物に置き換えるなんて・・」「手術がうまくいかなかったらどうしよう・・」「何年かしたらまた交換するのかな?」など、普通の方なら大手術を不安に思うのも無理はありません。
そんな時は私はこう説明しています。
- 現在の置換術は短時間で体への負担も少ない。
- 術後は、すぐにリハビリに入るので早い社会復帰が可能。
- 術式によるが、傷跡も小さく(6cm~8cm)、水着やショーツなどで隠れるよう配慮してくれる。生活制限がないなど技術の進歩が目覚ましい。
- 現在では30年近く耐用年数を期待できる人工股関節もある。
- 何より、毎日を終わりのない痛みの中で生活するよりも、術後のリハビリで徐々に痛み(術部)が無くなるほうが、今後の生活品質が格段に向上する。
末期のすり減った軟骨に対して、マッサージや温熱療法などの対処療法ではよくなりません。すり減った軟骨にきくと謳う怪しいサプリや、ヒアルロン酸の注射も同様です。代替療法にすがりたいのはよくわかりますが、丁寧に上記の内容を説明させていただき、最終は患者さんの判断ですが手術への決意を促すようにしています。
人工股関節への置換手術
先日、入院中の先生からリハビリの様子を伝えてくれるメールが届きました
(前略)手術も無事に終わり、術後すぐに杖無し歩行練習に入っています。傷と筋肉の痛みと微熱がありますが、関節の骨が当たる痛みとは全くちがうので大したことありません。理学療法士さんには、通常よりも早い回復ですが元々の筋力が弱いので、リハビリと筋力強化のトレーニングを行ってもらってます。(中略)荒木先生の後押しで決心できたので、お礼と報告まで。ありがとうございます!
メールからは、以前のようにエネルギッシュな性格を取り戻しつつあるのがよくわかりました。この先生は術後3週間で、すでに仕事にも復帰し以前のように活動的に飛び回っていらっしゃいます。
元気な姿を見せて欲しいというのはおかしな話ですが、またお体のメンテナンスに来ていただけるのを楽しみにしています。それまでは、無理をせずに頑張って頂きたいと願うばかりです。
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