「気象病」って、本当に気のせい?

「気象病」って本当に気のせい?

最近、いろいろな媒体で「気象病」という言葉をよく耳にするようになりました。

「雨が降ると頭が痛い」
「台風が近づくと体がだるい」
「天気が崩れるとめまいがする」

そんな経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。

一方で、私は以前、「それって、本当に病気なの?」と思っていました。

誰しも天気が悪くなると気分も少し落ち込みますし、なんとなく体調まで悪く感じることもあります。だから「気象病」と呼ばれているものも、「結局は気持ちの問題」なのでは・・・?

そう考えた理由の一つが、車で六甲山を越えるときのことでした。ドライブウェイを登れば、短時間で気圧はかなり変化します。それなのに、車で山に登っただけで頭痛やめまいが起こる人が、特別多いわけではありません。「それなら、低気圧が来たときだけ体調が悪くなるのはなぜ?」そんな疑問からです。

ところが、調べてみると、どうやら「気のせい」と簡単に片付けられる話ではありませんでした。

気象病は「気のせい」ではない

気圧や気温などの変化と、頭痛やめまいなどの症状との関係は、実際に研究されています。特に片頭痛については、気圧の変化などが発作のきっかけになる人がいることが報告されています。ただし、ここで注意したいことがあります。

「低気圧が来れば、誰でも体調が悪くなる」わけではありません。

気象変化との関係には、かなり個人差があります。ですから、「気象病なんて気のせい」と決めつけるのも違いますし、「低気圧が原因で体調が悪くなる病気」と単純に考えるのも違うようです。

「気象病」という一つの病気があるわけではない

そもそも「気象病」という言葉は、特定の一つの病気を指しているわけではありません。頭痛、めまい、倦怠感、耳の違和感、関節などの痛み……。気象変化によってこうした症状が出たり、もともとの症状が悪化したりすることを、まとめて「気象病」と呼んでいる、と考えたほうが分かりやすいでしょう。

そのため、「気象病の原因は○○です!」と一つの原因だけで説明してしまうと、少し話を単純化しすぎてしまいます。

「内耳が原因」という話も、少し慎重に

気象病について調べると、「内耳」や「三半規管」という言葉がよく出てきます。実際、気圧の変化と内耳・前庭系との関係は研究されています。そのため、内耳が気圧変化に対する身体の反応に関係している可能性はあります。

ただ、「気圧が下がる」→「三半規管が気圧を感じる」→「自律神経が乱れる」→「気象病になる」と、すべてがきれいにつながって証明されているわけではありません。ここは、現在も研究が続いている部分です。ですから「内耳が関係しているらしい」という話と、「気象病の原因は内耳である」という話は、同じではないのです。

では、なぜ山に登っても平気なの?

最初の疑問に戻ってみましょう。

車で山を登れば、短時間で気圧が変化します。それでも、ほとんどの人は普通に山を登り、普通に帰ってきます。このことを考えると、「気圧が変化したから、必ず体調が悪くなる」わけではないことが分かります。気象変化は、もしかすると「原因」というより、症状を起こすきっかけの一つなのかもしれません。

”もともとの体質や片頭痛などの疾患、睡眠、疲労、ストレス、気温や湿度など、いろいろな条件が重なったところに気象変化が加わり、症状が出る人がいる。”・・・現在の研究からは、そのように考えるほうが無理がありません。

「○○が原因!」を見かけたら、少しだけ立ち止まる

最近は、テレビやSNSで、「気象病の原因はこれだった!」「○○をすれば気象病が治る!」といった情報を見かけることがあります。もちろん、その中には研究をもとにした話もあるでしょう。

ただ、医学や科学の話は、そう簡単に一つの原因だけで説明できないことも少なくありません。気象病についても、「気のせい」と決めつけるのは違う。でも、「原因はこれ!」と一つに決めてしまうのも違う。今のところは、このくらいの距離感で考えておくのがよさそうです。

気象病について、すべてが分かっているわけではありません。それでも、「気象変化によって体調が変化する人は実際にいる」ということ。そして、「その仕組みは、まだ一つの原因だけでは説明できない」ということ。この二つを覚えておくだけでも、「~らしい」「たぶん~が原因」といった情報に振り回されにくくなるのではないでしょうか。

科学の話は、分かっていることだけでなく、「まだ分かっていないことがある」と知っておくことも大切なのだと思います。

では、実際につらいときはどうすればいい?

では、気象変化で実際に頭痛やめまいなどがつらくなったときは、どうすればいいのでしょうか。

まず大切なのは、「気象病に効く特別な方法」を探す前に、普段の体調をできるだけ安定させることです。十分な睡眠をとる、食事を抜かない、水分をきちんととる、無理のない範囲で体を動かす・・。どれも地味なことですが、睡眠不足や疲労、脱水などは、頭痛などの症状を悪化させることがあります。また、自分がどのような天候のときに症状が出やすいのかを記録してみるのも一つの方法です。

「雨の前だから必ず具合が悪くなる」と思っていても、記録してみると、実際には「睡眠不足の日に多い」「気圧よりも気温の変化が大きい日に多い」など、自分なりの傾向が見えてくることがあります。

そして、症状が強い場合や繰り返す場合には、単に「気象病だから」と自己判断せず、医療機関に相談することも大切です。

頭痛なら片頭痛、めまいなら耳や前庭系の病気など、「気象病」と呼ばれている症状の裏側に、治療できる別の病気が隠れていることもあるからです。「気象病だから仕方がない」と諦める必要もありません。一方で、「この食品を食べれば治る」「この方法で自律神経を整えれば治る」といった情報を、根拠を確認せずに信じる必要もありません。

結局のところ、気象病を必要以上に怖がる必要もなければ、気のせいだと片付ける必要もない。

自分の症状を観察し、生活リズムを整え、それでもつらいときには適切な診療を受ける。そして、テレビやSNSで「原因はこれ!」という情報を見かけたときには、「それは本当に分かっていることなのかな?」と、ほんの少し立ち止まってみる。そのくらいの距離感が、今のところはちょうどいいのではないでしょうか。

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