聞きなれない長鎖脂肪酸代謝異常症
私たちは、タンパク質、炭水化物、脂質などの食品成分から活動に必要なエネルギー作り出しています。そして、空腹時には体に貯めてある糖質・タンパク質・脂肪を分解してエネルギーを作ります。
そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、常に脂肪からエネルギーを作ろうとするのですが、脂肪を分解するための酵素が元々体に無いため空腹時や運動の時には常にエネルギー不足になってしまいます。そうなると、体は筋肉を分解してエネルギーを作ろうとします。結果として、体のだるさ、筋肉痛、少し歩くだけで息苦しくなります。
今回は、施術をしていく中で徐々に分かって来た長鎖脂肪酸代謝異常症と診断された女子(8年前で当時14歳)のお話です。
主訴
ご両親に連れられた女子は、自力で歩くことも出来ず車いすでの来院でした。お話を聞くと次のような内容でした。
- 少し歩いたりするだけで筋肉痛や筋疲労がでる
- 有名私立中学に通っているが、両親のどちらかが送迎しなければならない
- 小学生の頃から、大学病院や医療機関で筋肉の組織検査など様々な検査を行ったがどれも原因不明
- 精神科、心療内科、占い、祈祷師、霊媒師などあらゆる事を試したが効果は出なかった
- 特に始めていく所へは車いすが無いと出かけられない。かといって教室や家では普通に歩いている。
- 結局この子は「わがまま病」で甘えているだけなんです。医師からもそう言われました。
初見
まずは、全身の確認を行いましたが体は異常に柔らかく、まるで生まれたての赤ちゃんのようでした。特に足裏はマシュマロのようにフワリとして、これで歩けるのか心配するほどでした。結果としてやはり、どこかに可動制限や筋肉に痛みがあるわけでなく問題ないように思えました。ただ、そばにいるお母さんが、お嬢さんのこれまでの状態についてかなり感情的にお話されるのには閉口しました。
施術
通常よりも短めの調整を行い、カウンセリングに切り替えました。その際、お母さんにはちょっとお買い物に行って頂きました。結果として分かった事が以下の通り。
- 実は3歳の七五三のお宮参りの時から発症していた事(お母さんは小学生の時からとの認識)。足の痛みを訴えたが、無理やり歩かされた。
- 緊張したり初めての場所では特に、体が動かず、時に全身の筋疲労が起き歩けない。ただし慣れるとそれは無くなる。
- 食事の後は特に疲れるので、横になる事が多い。特に、揚げ物やポテトチップス等のおやつを食べると疲れるが好きなのでやめられない。
- 学校では、授業に遅れがちなため特別補講をしてもらっているが、周りの生徒からは疎ましく思われいじめにあっている。
- もう検査などであれこれ体をいじられるのは嫌だ。
術後
戻って来たお母さんに主治医に伝えてほしい事として、どうやら食事が関係しているとの事。この事について娘さんは特に重要視していたかったので、今まで誰にも話してこなかった事。発症年齢から考えて、先天的なトラブルである可能性がある事などをお伝えしました。
結果として、大幅に検査方法の見直しが行われ当時珍しかった「長鎖脂肪酸代謝異常症」との診断がでました。ただ、医師からは20歳まで生きられないかもしれないとの告知も・・。14歳の女子になんて事を言うのかと憤りを感じました。どうりで来るなり「もう死にたい!生きてたく無い!」と泣きじゃくるはずです・・。
そこで当時、米国の医療論文が検索できるサイトに入れたので調べると、低血糖状態をふせぐ事、長鎖脂肪酸を含む食品を摂らず、中鎖脂肪酸を含むものに切り替える事などで通常の生活が送れることが載っていました。そのコピーをお母さんから医師に渡してもらい、結果として管理栄養士さんとの生活改善を行う方向で経過観察となったようでホッとしました。改善内容は「小さなおにぎりを小まめに食べ(頻回食)て血糖値が下がりすぎないようにする」「お料理はココナツオイルなどの中鎖脂肪酸を吹くものに切り替える」などでした。
後日談
ただこの時、お母さんに対してお嬢さんとの接し方について、少し考え直して頂けないがを意見してしまった事が、残念ですが当院との関係を断つことにもなりました。
その後8年経ちますが、どうされているのでしょうか。きっと良いお嬢さんになって、元気で過ごされているものと思います。
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